2011.6.2
「放射線量フクシマより多い」 ブラジルの療養ビーチ閑古鳥
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ブラジル南東部グアラパリで療養に来た女性が座る「アレイアプレタ(黒砂)ビーチ」=4月21日(共同)
ブラジル南東部に、自然放射線量が世界最高水準とされる浜辺がある。周辺住民は年間約10ミリシーベルトを浴びるともいわれる。黒い砂が腰痛やリウマチに効くとの評判から療養地として有名だが、福島第1原発の事故後「放射線量はフクシマより多い」とする報道が相次いだため、美しい浜辺に閑古鳥が鳴いている。
「事故で半身不随になった人が歩いて帰ったんだ」。エスピリトサント州グアラパリ市の「アレイアプレタ(黒砂)ビーチ」で約30年間、海水浴客らの救命監視員を続けるジョアン・シリロさん(52)がアピールする。「砂から出る放射線が体にいいんだよ」。天然の鉱物による周辺の自然放射線量は、イラン北部ラムサールやインド南部ケララ州の一部と並び世界有数だ。
手の指に黒砂を載せていたマリリア・サントスさん(59)は遠方から長期療養に来た。「がんになる人もいるって聞いたけど、つらい指の関節痛が治るのなら」と話す。35年前に医者に勧められて訪れ五十肩が治ったという男性(88)は定期的に療養に訪れる。
効能は古くから知られ、先住民も療養に訪れていた。1930年代に黒砂の放射線が血行に影響すると研究者が発表したこともあり、州が宿泊療養施設を建設。浜に座るだけでも効くとされるが、より効果を高めようと砂風呂のように埋まる人も続出した。
ところが、福島の原発事故後、地元紙やラジオが「グアラパリの放射線量はフクシマより多い。子供は近づかないように」などとする研究者らの発言を報じると状況は一転。周辺のホテルは連休中でも空室が目立ち、浜の人影はまばらだ。ホテル従業員らは「報道による風評被害だ。健康にいい街という評判はがた落ちだ」と訴える。
黒砂は、付近の鉄鉱石鉱山から放射性元素トリウムを含む鉱物モナザイトが海に流れ込み、地形と潮流の影響で同ビーチに集まるとされる。周辺はいずれも黄色がかった白砂で放射線量は高くない。
市によると、内外の研究機関や地元当局が周辺住民の健康調査をこれまでに何度も実施。染色体異常が発生する割合が他地域より若干高いが、がん患者や肢体の不自由な子供の比率は差がないという。ただ、黒砂の砂浜に限れば、年間放射線量が400ミリシーベルトに及ぶとの調査もあり、立ち入りを禁じるべきだと主張する研究者も多い。
現地を調査したことのある日本人研究者は「周辺住民の健康に影響が出るほどではない」との認識。原発事故などと異なり、大気中の放射線量を心配する必要はなく、農作物の摂取などを通じた内部被(ひ)曝(ばく)の恐れもほとんどないという。
この地域は魚やカニ料理も名物。魚介類の放射性物質の調査は行われていないというが、地元漁師ジェネジ・ヌニェスさん(62)は「魚に影響はないと信じている」と話している。(共同)
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